知能指数(IQ)を知ること、および「ギフテッド」に対する理解の促進は、社会の分断を改善するのだろうか。

「ギフテッド」、その前はIQ(知能指数)という形で、現代人とされる私たちは、己の知能だけでなく、他人の知能のあり方にまで関心を示すようになった。それに伴い、「ギフテッド」というカテゴリーは近年の世相において、日常的な語彙のひとつとして語られ…

哲学の悦び

「哲学は百科全書的な旅 La philosophie, c’est un voyage encyclopédique 」。自分の信念はここにあると思う。自ずと、そのような旅路を歩んでいる自分の存在に気づく。そこからもう思惟の歩みはスタートしていた。 今まで国際関係論、政治学、社会学、哲学…

ジャニー喜多川の性加害事件を通して見る「無責任な社会」のあり方

ジャニー喜多川とその性加害。芸能界の在り方が瓦解していく兆しであると同時に、日本社会に固有の集団的なナルシズムが露呈されていくことを望む。以下、できるだけ簡潔に今回の事件について思ってきたことを述べたいと思う。 まず、ここでは、芸能界の展望…

「バーベンハイマー」:原爆をめぐる記憶のポリティクス

原爆投下は必要悪necessary evil であったとする言説を解体すべきという「抗い」の必要性は認識する一方、大日本帝国によるアジア地域の統治は欧米列強の帝国主義から解放するための必要善 necessary goodだとする言説を「守る」傾向も強い世論であるとも思…

政治哲学学会発表〈概要〉

既にお知らせした通りではありますが、来たる政治哲学研究会の第47回研究大会において、私の演題が採択されました。以前、お伝えしたような内容のままではありますが、簡単につまみの部分だけ再共有いたします。発表題目は、「ナショナリズムの生政治的転回…

生権力論における基本的了解:フーコーとアガンベンの対比を通して

(1) 生権力とは何か 生権力とはなにか。日常的にも、学術的にも特殊なこの言葉は、ミシェル・フーコーによるものである。フーコーによると、生権力とは、人の命を「生きさせるか死の中へ廃棄するという権力」(フーコー、1986:175)である。一概に言うと…

汚物な自分

「僕は、人間としての存在が汚れている。あまりにも、醜い。」そんなことが、無意識にもぼくという人間のあり方を作っていた時期があった。小3から小6まで、いじめを受けていたころだった。常にクラス内の男子のグループから、攻撃のターゲットにされていた…

建前と本音

昔話になること。 たとえ現実的ではないとはわかっていても、せめて「リベラル」な環境にいるならば、それにコミットすることに相応するだけの知的感覚と、知的な寛容さを僕の友人たちには持っていてほしかった。 条件反射的に、バズワードに反応したり、祭…

杞憂

「きっとみんなからしたら僕は、未熟で半人前にもなれていない中途半端な人間だ」とふと思うことはある。 ただ、同時にそれは僕自身が選んだ進路に対する思いについた「贅肉」のようなものであるのも事実だ。マッチョイズム的であるにせよ、その「肥えた」部…

「他者に丁寧で思いやりのある」人々の国のあり方

身体拘束「なぜ心が痛むの?」「地域で見守る?あんた、できんの?」精神科病院協会・山崎学会長に直撃したら…:東京新聞 TOKYO Web この人物の来歴云々はともかく、記事構成の按配としては比重がよく取れているのでは、と思った。以下、精神疾患の哲学的探…

汝自身を知れ:「王」を知ること

歴史家、エルンスト・H・カントーロヴィチによると、「王」というものは自然的身体 body natural と、政治的身体 body natural の二面性から成り立つ。「神的」なものとされているのはもっぱら後者であり、前者はごく普通の人間の身体と同じものとされている…

いないいないばあ:「わたし」はどこのひと?

アイデンティティの複数性を積極的に肯定する世相は、その渦中を生きる人間の生に対しての無知を晒す。しかし、それを責めるものはいない。「持たざるもの」は、「持てるもの」の生の諸相について知る由もないのだ。わたしは、両者の立場から物事が見えるこ…

今日の社会における日本人の市民意識について

突然だが、結論から述べることにしたい。日本人が民主主義を行為として実践するにしても、他者に対して「隣人的に」接することを知らなすぎた。また「隣人」としての他者を意識してこなかった歴史が長すぎた。アガペーに無頓着すぎたところが、日本人の市民…

眼が象る社会問題

かなり広く語られるようになった「差別」にいかに抗うかという議論、西洋的価値観がこの社会に導入されてきた背景を踏まえるならば、西洋文明の世界観の根源にある視覚中心主義の存在も一際意識する必要もあると思う。反差別の認識が(皮肉にも)「目に見え…

修士一年がもう終わる

6月になってしまった。ひとまず、ばてない程度に文献もっと読んでいけたらなと思います。全体的に、文献読み続ける目的としては以下の背景に則っています。 【目的】人格性 Personhood が措定する健常者像は、近代以降の産物であり、また現代を生きる我々も…

生政治ノート(随時更新)

① 自分の問題意識に関して(エスポジト『三人称の哲学』に基づく) 'In order to be able to assert what we call subjective rights - to life, to well being, to dignity - we must first enter into the enclosed space of the person. Conversely, in a…

論文の構想(年末迄)

現在、「精神病患者=逸脱者=異常者」という等式を成立させている、シェーマをテーマにして、論文執筆の上での文献調査をしています。 先日も軽く言及しましたが、その際に、個人の主体=責任能力がある行為者という前提のもとに機能する〈法〉、およびそれ…

研究生活日記

「イメージしやすいもの」がウケるのが、ごく普通な世の中だが、学問もまたその例外ではない。なぜなら、それに合わせた方が、周りの協賛を得やすいからだ。同時に、どれだけ専門を極めても、またどれだけオリジナリティを高めても、世間から理解されなけれ…

修論のテーマ

もう修士一年も半分切ったところで、修士論文の構想を固めなければならない頃合いとなりました。 大まかに言えば、テーマは二つに分節したものになります。 ①犯罪者表象を構成する要素としての「狂気」、及び精神病患者との重なり合い②「狂気」を統御するた…

政治を認識する

近年の世相において、客観的学問の対象としての「政治」を想起することは難しくなっている。根源的には、政治とは行為の力学ではなく、認識の生態学によって説明が始まる事物である。 故に、私の関心を惹き寄せるのは、政治的な事象を通じて、日常世界に対す…

「勉強」:「キモさ」を会得する技術

勉強すると「キモい」人間になれる、というのは確か千葉雅也の言葉だったはず。というのも、実際院生として色々学び続ける中で、僕という人が「キモく」変容していることを体感するからだ。 おそらく、俗にいう「ガリ勉」と違う意味があるのだろう。以下は、…

存在の弱さは、思考の強さ

もとい僕は「おとなしくしていればいい」だけの人間であった。「ガイジン」にしては、この国で持つものを持ちすぎている。少なくとも、「知識人」という立場にいてはいけない、周縁的な生が僕にとっての本来性だったはずである。 僕はマイノリティとして社会…

「科学的なもの」の概念との付き合い方

初っ端から、科学哲学⇄政治哲学を梯子するような履修・研究計画を立てたものだから、すこぶる忙しい。おそらく、学部生の時よりかは、勉強していると言っても過言ではないかも。裏を返せば、学部生のときにどれだけ勉強してこなかったのかと言うことの裏返し…

執筆後の余韻&今後の研究構想について

ツイッターでも、すでに報知した通りではありますが、拙著の研究ノートが東京大学『科学史・科学哲学』第26号に掲載されました。 hps.c.u-tokyo.ac.jp 内容としては、フーコーの生権力的な了解に基づく、政治的な身体論について研究ノートを上梓した形となっ…

研究メモ:社会の身体

写真は、博士課程に進んだ際に取り組もうと考えている、研究テーマ乃至その構想の一部である。以下の文章は、その背景となるものとして載せておく。 * 目的:ハーバーマスとルーマンの論争を踏まえて、公共空間の科学的な変容を考える。 背景: 数十年前ま…

死人に顔なし

2022年の自殺者数 女性は3年連続で増加 小中高生は最多に(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース 去年、1年間に自殺した人の数は全国であわせて2万1881人となり、女性は3年連続で増加となったことが分かりました。また、自殺した小中学生や高校生…

ポストコロニアリズムという憑き物

ふと思うこと。というよりは、物心がついた頃から、ずっとわだかまりだったものである。 それはなにかだけ言うならば、日韓の歴史問題である。また意識高いこと言ってる、といえばそうだろう。僕だって、この話題における自分の立ち位置なんか意識しないでい…

二都物語

無批判な主体は既に、僕の中の無意識に埋没していた。けど、それは哲学の営みで消滅し、代わりに新しい「批判的な主体」が生成される。だけど、その主体も、現前していた頃から段々と無意識に埋没していくという意味では、それもまた消滅する。それをまた現…

もう飛び降りてこの世にはいなかったはずのいじめられっ子が、なぜ今研究の道を歩みながら生きているのか

0. はじめに 今更ながら、自己紹介をしようと思ったのには、僕の人柄の部分があまり伝わることがなかったことがあります。それで思い切って、自分のパーソナルな側面を今回は取り上げて書こうという運びとなりました。 端的に言えば、小さい頃からのいじめら…

我思う、ゆえに世界あり

はたからみれば、自己肯定感とされるものが強い人は素敵だし人柄がいいと思う。おそらく周りの人々からもいいエネルギーを受けているのでしょう。僕も、そのような自信を持って動き、なおかつ周囲に配慮できる人は敬愛する。 ただ、僕はそのような自己肯定感…