死人に顔なし

2022年の自殺者数 女性は3年連続で増加 小中高生は最多に(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース

去年、1年間に自殺した人の数は全国であわせて2万1881人となり、女性は3年連続で増加となったことが分かりました。また、自殺した小中学生や高校生も500人を超え、これまでで最も多くなりました。厚労省などによりますと、去年1年間に自殺した人の数は、確定値で2万1881人でした。前の年から874人増え、2年ぶりに増加しました。男女別でみると、男性は前の年からおよそ800人増えた1万4746人で、13年ぶりの増加となりました。女性は60人以上増えた7135人で、3年連続の増加となりました。

生命は平等じゃなかったの?というのが率直な反応。数量化して社会階層で篩い分けて、統計的事実として扱うことで見えるものは当然あるけども。ただ、人の死という、複合的な出来事を、実証的に精査しうる対象に据えてしまうことに慣れてしまった我々は、「人間であること」という存在上の事実を忘れてしまったのではないだろうか。

また、コメント欄にも散見される、「死の男女論」についても首を傾げてしまった。自殺数で子供・女性の数が増えたのは深刻だが、男性は一万人越してる...という発言は、本当に辛くなる。自分も希死念慮激しかったときもあったので、余計に苦しくなる、といったら平和ボケなのか。人の死に老若男女が存在するのものなのか。

改めて、ここで述べたのは、自然としての「生命」に対して、社会的な解釈が先行するかのような言説は誤った方向に世論を誘導する虞があるという点である。確かに、その意味ではハッキング的な「何が社会的に構築されているのか」という命題に則っている。とはいえ、統計データ内の性別ごとに内在する社会問題は依然として根強い。

例えば、精神科医の井上氏によると、

コロナ禍に入ってから女性の自殺者数は増えつづけています。

とくにコロナ禍に入ってから女性の自殺上昇率が高くなったのは宿泊飲食サービス業でした。誰もが知るように「観光業」はコロナ禍でもかなりの打撃をうけた業種です。

さらに、これらの飲食サービス業の仕事は、女性の就業率も高く非正規雇用率も高いため、どうしても人員の整理時には女性の従業員が対象となりがちでした。

そこを皮切りに健康面や経済面の問題がより深刻化したり、社会から切り離された孤立や孤独感に心をどんどん蝕まれます。

他にも女性特有の問題として、自粛ムードにより家庭内暴力や在宅介護などの負担が増えていることも一つの要因ではないかとも言われています。

というように、性差ごとに固有の問題が、今まで置き去りにされてきた、構造的な側面も無視できない。

また、同時にそのような構造に由来する性二元論的な視座で見ようと思えば、なんでも男性的・女性的な説明ができて、それで一貫してしまう。他だとナショナリズム研究的な視座でみようと思えば、なんでもわたしたち・彼らの二元論で説明できてしまうだろう。総じて、人間の客観性、客観化は極端な方向に行きやすいことを念頭に置いた上で、今の世相に応じた、自殺という社会現象におけるアノミーを炙り出す必要がある。